学部

医療データベースを用いた課題研究の成果(2022年度版)をデータサイエンス学部生が報告

 和泉志津恵研究室の3年次・4年次のゼミ生11名が「大学生のための医療統計学」の教育プログラムに、2019年度・2020年度・2021年度に続いて参加しました。このプログラムでは、大学生たちが身に着けた知識(統計検定2級程度)を実際に使い、Problem-Plan-Data-Analysis-Conclusion (PPDAC)サイクルをまわすことにより、医療統計学における課題解決に至るまでの過程を体験し、実践経験を積み重ねることを目的にしています。2022年度は対面授業に戻り、ゲスト講義や成果報告会では対面授業と同時双方向型オンライン授業を併用しました。

 理論の学習では、次の表の内容を春学期と秋学期において学びました。

 上記のうち幾つかの講義を、DS学部「回帰分析」の履修生(主にB2年次114名)、「質的データ解析入門」の履修生(主にB3年次26名)、DS研究科「モデリング基礎理論(主にM1年生50名)」、「統計的モデリング(主にM1年生36名)」とともに学びました。また、和泉志津恵教授の自主ゼミでは、DS学部1・2年次生とともに「宇宙怪人しまりす 医療統計を学ぶ」や「宇宙怪人しまりす医療統計学を学ぶ:検定の巻」を輪読しました。加えて、11月8日(火)に開催された秋学期のDSセミナーでは、安井 裕氏(カナダ・アルバート大学、米国・St. Jude Children’s Research Hospital)による講演会「Data Scientists’ Contributions to Childhood Cancer Survivorship Research in the United States(和訳 米国の小児がん生存者研究におけるデータサイエンティストの貢献)」に参加し、交流会をもちました。

 応用の学習では、統計数理研究所の令和4年度重点型共同研究「医療における時空間メッシュデータの利活用についての研究」(2022-ISMCRP-4302)による支援により、春学期に時空間メッシュデータを用いた課題研究に取り組みました。まず、MESHSTATSアプリケーションアイデアソン2022 (5月21日(土)、横浜市立大学みなとみらいサテライトキャンパスとオンラインでのハイブリッド型開催)において、SDGsの目標の中の目標11:「住み続けられるまちづくりを」をテーマにして都市の社会課題解決を目指すMESHSTATS用のアプリのアイディアを、3・4年生合同チーム3組が提案しました。次に、横浜市立大学サマーデザインワークショップ2022 (8月19日~24日、横浜市立大学みなとみらいサテライトキャンパスとオンラインでのハイブリッド型開催)において、「WITHコロナ時代の医療機関の建設要件デザイン」の企画を3・4年生合同チームが提案し、企画書が採択されました。オンラインで実施したOne-Dayワークショップでは、医療メッシュ統計が活用可能な事例や場面を検討し、地理情報・32診療科別医療機関数・人口・年齢・観光・経済を含むサンプルデータを作成し、簡便なデータ解析の結果を報告しました。

 また、春学期「回帰分析」のクラスでは、体重の変化を他の測定項目から予測する回帰モデルを調べました。履修者を4名づつの28班に分け、班ごとにデータ分析の結果を統計グラフポスターにまとめました。2022年7月22日(金)の発表会では、山本祐二氏(滋賀大学保健管理センター 所長、教授)、池之上辰義氏(滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 講師)、徳山健斗氏(中外製薬株式会社)の前で、1次選考で選出された5つの班が予測モデルの説明を行いました。その結果、最優秀賞が「け班」(五十音順に小溝奏子、坂口暁海、坂本一朗)へ授与されました。

 次に秋学期では、教育用医療データや教育用健康診断データを利用するために、学生たちは秘密保持誓約書に電子署名しました。この教育用データは、健康保険組合のレセプトデータや健康診断データの匿名加工された医療ビッグデータから抽出された実データです。まず、学生たちが独自の視点で取り組みたい課題の研究計画を立て、計画内容をブラッシュアップして、自身の研究計画を仕上げました。次に、3年次生は統計解析ソフトRを動かし、教育用健康診断データのデータチェック、データクリーニングを主に行いました。一方、4年次生はデータベースソフトSQLiteや統計解析ソフトRを動かし、教育用医療データから解析用データを加工し、統計的モデルや分割表を用いて変数間の関係性を調べました。ゼミ生らは、グループごとにデータ分析レポートの査読を行い、互いの気づきやコメントを共有しあい、データ分析レポートを改善しました。また、浅原啓輔氏(滋賀大学データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 助教)に助言をいただき、研究内容をブラッシュアップして成果報告会へ臨みました。

 最後に、2022年11月29日(火)と12月6日(火)に開催した成果報告会では、学生たちが課題研究のデータ分析レポートの内容を説明し、質疑応答を含めた議論を行いました。この報告会では、伊藤氏、立森氏、小山氏、山本氏、池之上氏に、学生独自の視点で取り組んだ課題研究について助言をいただきました。

 今後も、データサイエンス学部は、医療データを用いた教育プログラムを通じて、データサイエンス分野の人材を育成してまいります。末尾になりましたが、ゲスト講師の方々、成果報告会の参加者の方々、株式会社地域科学研究所から賜りましたご支援やご協力に深謝申し上げます。

<参考サイト>
・医療データベースを用いた課題研究の成果報告(2021年度)
 https://www.ds.shiga-u.ac.jp/news-faculty/p6932/
・データサイエンス学部の学び:Student’s Voice
 滋賀大学「大学案内2023」, P.27(2022年7月)
 https://www.shiga-u.ac.jp/information/publish/info_publish-guidebook/
・MESHSTATSアプリケーションアイデアソン2022
 https://www.fttsus.org/webconf/meshstatsapp2022/
・横浜市立大学サマーデザインワークショップ2022
 https://www.fttsus.jp/jstmirai/events/ycusdw2022/
・統計数理研究所2022年度重点型研究テーマ3「地図・メッシュ・位置情報データのデータベース作成・統合と高度利用」研究集会
 https://www.fttsus.org/webconf/20230220-1/
・放送大学学園「数理・データサイエンス・AI応用基礎講座」データサイエンス基礎 第2回 分析設計 和泉志津恵教授
 https://mds.ouj.ac.jp/contents/detascience_basic/