お知らせ
データサイエンス学部生が医療データベースを用いた課題研究の2020年度成果を報告しました
統計数理研究所医療健康データ科学研究センターとの連携・協力の一環として、和泉志津恵研究室の3年次・4年次のゼミ生16名が「大学生のための医療統計学」の教育プログラムに、2019年度に続いて参加しました。このプログラムでは、大学生たちが身に着けた知識(統計検定2級程度)を実際に使い、Problem-Plan-Data-Analysis-Conclusion (PPDAC)サイクルをまわすことにより、医療統計学における課題解決に至るまでの過程を体験し、実践経験を積み重ねることを目的にしています。2019年度は秋学期の対面授業でしたが、2020年度は春・秋学期にて対面授業、同時双方向型オンライン授業、オンデマンド型オンライン授業の3つを組み合わせた授業形態に拡張しました。
まず、2020年4月9日(木)に同時双方向型オンライン授業にて、学生たちは統計家の行動基準について学び、医療統計家のためのワークショップ(2015年度統計関連学会連合大会 共同発表者 京都大学医学部附属病院 佐藤恵子氏、和泉志津恵)の教材を用いたグループ演習に参加しました。また、統計数理研究所医療健康データ科学研究センターから提供された「母集団100万人の教育用医療データ」や滋賀大学が取得した「母集団100万人の教育用医療データ」を利用するために、学生たちは秘密保持誓約書に電子署名しました。この教育用データは、健康保険組合のレセプトデータ及び健診データの匿名加工された医療ビッグデータから抽出された実データです。また、学生たちは各自が用意したノートPCをデータサイエンス学部の専用サーバーにリモートデスクトップ接続して、教育用医療データをもとに医療データベースを構築しました。また春学期では、医療データベースから抽出した1万人のサンプルデータをもとに予備解析を行い、学生たちが独自の視点で取り組みたい課題の研究計画を立て、中間発表にて助言をいただき計画内容をブラッシュアップして、自身の研究計画を仕上げました。
次に、2020年4月21日(火)に同時双方向型オンライン授業にて、伊藤陽一氏(北海道大学病院 臨床研究開発センター 教授、前 医療健康データ科学研究センター長、医療健康データ科学研究センター 客員教員)および立森久照氏(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター情報管理・解析部 生物統計解析室長、医療健康データ科学研究センター 客員教員)によるゲスト講義が行われました。学生たちは、臨床研究のデザインと統計学、レセプトデータを用いた有害事象発現リスクの評価方法を学びました。また2020年4月30日(木)に、佐藤俊哉氏(京都大学大学院医学研究科医療統計学分野 教授、医療健康データ科学研究センター 客員教員)によるゲスト講義が行われました。オンデマンド型オンライン授業にて学生たちは講義資料や講義動画をLMSで閲覧や視聴した後に、同時双方向型オンライン授業にて質疑応答を含めた議論を行い、医療統計学は何かを学びました。また、2020年7月3日(金)に同時双方向型オンライン授業にて、小山暢之氏(第一三共 株式会社)および徳山健斗氏(味の素 株式会社)によるゲスト講義が行われました。学生たちは、医学・薬学の研究における質的データ解析入門、「おいしさ」を科学する研究における回帰分析を学びました。2020年10月19日(月)に同時双方向型オンライン授業にて、冨田哲治氏(県立広島大学 地域創生学部教授)によるゲスト講義が行われました。オンデマンド型オンライン授業にて、学生たちは時間などの変数の値によって変化する係数を含む統計的モデル(変化係数モデル)の概要とその活用事例についての講義資料や講義動画をLMSで閲覧や視聴しました、その後、同時双方向型オンライン授業にて質疑応答を含めた議論を行い、統計解析ソフトRのプログラミング演習に参加しました。
次に秋学期では、学生たちはデータベースソフトSQLiteや統計解析ソフトRを動かし、レセプトや特定検診などのテーブルデータを組み合わせ、自身の課題に合わせた作業データを加工し、統計的モデルや分割表を用いて変数間の関係性を調べました。中間発表にて助言をいただき研究内容をブラッシュアップして、最終発表会へ臨みました。一方、和泉志津恵研究室の院生と研究生4名は、メンタルモデルとして後輩たちの主体的な学びを促しました。
最後に、2020年12月24日(木)に彦根キャンパスでの対面と同時双方向型オンラインの併用授業にて、職場見学と成果報告会を行いました。オンライン職場見学では、中村 治雅氏(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 臨床研究支援部 部長)によるゲスト講義をとおして医薬品の開発の流れを学びました。また、成果報告会では、学生たちが作成した課題研究の発表資料や発表動画をオンラインで閲覧や視聴した後に、質疑応答を含めた議論を行いました。この報告会では、松井茂之氏(統計数理研究所医療健康データ科学研究センター長)、伊藤氏、立森氏、小山氏、徳山氏、山本祐二氏(滋賀大学保健管理センター所長)、福間真悟氏(京都大学大学院医学研究科 特定准教授)に、学生独自の視点で取り組んだ課題研究について助言をいただきました。また、教育プログラムのアドバイザーによる審査の結果、「グリメピリド服用患者の特徴と先発薬と後発薬の比較」(3年生 山根早紀さん)と「高齢者の健康と身体的・社会的習慣との関連について―主観的健康と客観的健康に着目して―」(4年生 等々力健太さん)に2020年度最優秀賞が授与されました。
今後も、データサイエンス学部は、医療データを用いた教育プログラムを通じて、データサイエンス分野の人材を育成してまいります。末尾になりましたが、統計数理研究所医療健康データ科学研究センター、ゲスト講師の方々、成果報告会の参加者の方々、株式会社地域科学研究所から賜りましたご支援やご協力に深謝申し上げます。
<参考サイト>
・統計数理研究所と研究協力に関する協定(2016年10月31日) https://www.shiga-u.ac.jp/2016/11/01/44098/
・医療データベースを用いた課題研究の成果報告(2019年度) https://www.ds.shiga-u.ac.jp/news-faculty/p5035/
・常に社会を意識!滋賀大学の実践教育(2020年6月) https://dime.jp/genre/922316/
・和泉志津恵, 伊藤陽一, 立森久照.医療ビッグデータを活用したデータサイエンス教育 – 産学協働の取組み(2019年度)-.第27回大学教育研究フォーラム(2021年3月) http://www.highedu.kyoto-u.ac.jp/forum/2020/
・センター報「Data Science View」 Vol.5 May 2021(2021年5月発行予定)