データサイエンス学部をめざす人たちへ

高校生のみなさんは、自分が大学を卒業した時に何ができる人になっていると想像しますか?
滋賀大学データサイエンス学部および大学院では、毎年2月に卒業研究発表会と修士論文発表会が行われます。今年も、金融、流通、自治体、製造、農業、漁業、人事、教育、いろいろな分野でレベルの高い発表がありました。「データサイエンスは具体的な社会問題を解決しているのだぞ」と再認識しました。卒業・修了したときに、社会や会社の具体的な問題を解くスキルを身につけられる。それこそが、データサイエンス学部を志向すべき理由です。

データサイエンスの第二章 データサイエンスは高次元の潜在表現を扱う時代へ

みなさんの中には、ChatGPTやStable Diffusionに代表される生成AIに興味を持つ人もいるでしょう。近年登場した新しいデータ処理のアプローチでは、大量のデータを用いて高次元の潜在表現を獲得します。潜在表現というのは意味や概念を表すベクトルと理解してよいでしょう。みなさんが高校の数学で習ったベクトルはせいぜい3次元くらいだったでしょうか。これからは768次元といった高次元のベクトルを普通に扱う時代がやってきます。高次元のベクトル空間は、人間を含む地球上の生き物が直感的に理解できない世界です。この扉を一緒に開けていきましょう。

どんな種類のデータでも扱える分野横断的なデータ活用のプロへ

政府の掲げる目標として、「データサイエンス・AIを理解し、各専門分野で応用できる人材」を年間約25万人育成することが書かれています。これに従って、例えば、工学部や経済学部といった既存の文系・理系学部が急速にデータサイエンスの教育を取り入れ始めています。これらは専門領域のデータに特化したデータ活用を学ぶというアプローチになります。一方で、データサイエンス学部は分野横断的なデータ活用のプロをめざします。すなわち、調査データ、統計データ、センサーデータ、テキストデータ、音声・振動データ、画像・動画データ、医療データ、どんなデータがやってきても、それを分析し活用できる人材をめざします。

データサイエンス学部 学部長 市川 治

データサイエンス学部の理念

滋賀大学データサイエンス学部は、日本で初めてデータサイエンスを体系的に学べる学部として2017年4月に発足しました。情報学と統計学を中心に据え、様々な領域に溢れているデータを解析し、創造する力を高めることを目標としています。このため本学部では、文系や理系といった既存の学問の枠組みにとらわれることなく、「文理融合の価値創造の実践」を通して、多くの成功体験を積むことができるように教育内容を設計しています。

(1)設置の目的と育成する人材像

近年、情報通信技術の進展によって、社会のさまざまな分野でビッグデータと言われる多種多様で膨大な量のデータが集積され、その活用による付加価値の創出が大きな課題となっています。このような社会的な要請に応えるため、データサイエンスに焦点を合わせた日本初の本格的な学部を2017年4月に設置しました。本学部では、データサイエンスの専門知識やスキルといった理系的基礎の上に、データ利活用の現場で相互補完的な専門性を有する仲間とコミュニケーションを図りながら、データから価値のある情報を取り出し、それを意思決定に活かす能力を備えた文理融合型の人材を育成します。

(2)教育課程の特色

本学部の教育課程では、統計や情報の基礎力を身に付けるだけでなく、実際にデータの解析結果を意思決定に活かして、価値創造できる力を高めることを目的としています。このような目的を達成するため、1年次、2年次には統計学と情報工学の基礎的内容を身に付け、さまざまな応用分野におけるデータ分析の実例を学びます。それらの基礎をもとに、3年次、4年次では各種領域科学におけるデータ分析手法を学び、実際のデータを使った演習を通して価値創造の実践経験を積み重ねていきます。それに加え、各自の興味に応じ、さまざまな統計手法の数理的内容をより深く学んだり、より高度な情報処理技術を身に付けたり、より多くの分野における問題解決スキルを磨いたりできるカリキュラムを用意しています。

データサイエンス学部が求める学生

データサイエンスの応用領域は、自然科学分野ばかりではなく、むしろ人文・社会科学系分野が多く含まれるため、文理両方の素養を身に付ける必要があります。したがって、本学部では理系文系を問わず、次のような資質をもつ人の入学を求めています。

  • 高校の様々な教科・科目の学習を通して、バランスよく、文・理の基礎的知識を身に付けてきた、潜在性豊かな人
  • コミュニケーション力を有し、多様な人々と協働して、理想の未来に向けた価値創造に貢献したい人
  • 物事を筋道立てて考えることができ、人間社会や自然の現象を数理的に分析することに関心のある人
  • 情報ネットワーク、プログラミング、コンピュータグラフィックス(視覚化)などに関心がある人